イギリス市民文化とオークション
先週は、オークションとは、またオークショニアとはどのような仕事なのかをご紹介しました。
今回は、オークションの本場、イギリスにおけるオークションの歴史についてお話しいたします。
イギリスの市民文化に根付いたオークション
私は、現存する世界最古のオークションハウス、イギリスで誕生したサザビーズでオークショニアをつとめていましたが、イギリスではオークションというものは、大体18世紀頃から、古本屋として誕生したと言われています。
本は、当時から、文化財に近い性質を持っていましたので、富裕層を対象としたものとされていました。そういう方々が本を大量に売り出す時に、一つ一つ値段を付けて売り出すのはかなり時間もかかります。なので、何千冊もあるという大量の本を、一気にロンドンで売り出す方法として、スタート価格、例えば50ポンドとか10ポンドとかと決めて、一番高く値段を付けた人が落札する形として、サザビーズはオークションを実施し、それを生業としたわけです。
ただその頃イギリスでは、どんなに田舎町に行ってもお店が2つあると、1つはパブで、もう一つはオークション会社であったといわれています。それ程に、オークションは市民生活の中に浸透していたのです。
なぜかといえば、18世紀頃のイギリスでは、あらゆるものが非常に貴重な時代でした。なので、市民生活の中では、それらは頻繁にリサイクルされたわけです。よって短時間に、かつ多量に、日常品であるコップやお皿などを売買する手段として、オークションが発達したと言われています。
大戦を経て、アートがオークションに出回る
現在では、オークションというとアートが売買される場というイメージが強いですね。
ですが、アートがオークションで中心的に扱われるようになったのは、実は、(第二次世界大戦)戦後からと言われています。
所謂コレクターといわれる、絵が好きで戦前から作品を集め、コレクションしていたような方々が、大戦を経て経済や政治が荒廃した中で、自分の財産をこの先いかにするかと考えた中で、集めていたアート作品を一気に売りさばいて、お金に変えることを考えました。
そうしたコレクターの方々が、オークションに出品したことで、アート作品が多く出回るようになった、ということが歴史的な背景だと思います。
アートというのは、一般的には世界に1つしかないものです。オークションを実施するにあたっては、オークショニアがいて、売主の方とオークションでの売始め価格を相談して決めて、そしてオークションで実際に売りに出されます。
昔は現在のように通信機能も発達していなかったわけですが、こうした通信機能が現在に至るように発達するに従って、オークションもどんどんとグローバルな規模で出来るように発展していったのだと思います。
今回は、イギリスにおけるオークションの歴史を外観しました。
来週は、日本におけるオークションについて考えてみたいと思います。
Power of Art、来週もお楽しみに!